大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和37年(行ナ)205号 判決

原告は「昭和三五年抗告審判第二、二五四号事件について、特許庁が昭和三七年六月二七日にした審決」の取消を求める本訴を提起し、右審決書の謄本が原告に送達せられたのは同年七月一八日であり、右審決に対する訴提起期間は特許庁長官の職権により同年一一月一七日まで延期せられていたが、次の事情によつて原告は本訴を同月一九日に提起せざるを得なかつたものであつて、右事情は民事訴訟法第一五九条にいう、当事者がその責に帰すべからざる事由により不変期間を遵守すること能わざりし場合に該当するから、訴訟行為の追完により本訴は適法に提起せられたものであると主張するのである。そしてその事情というのは、ドイツ国に住所を有する原告が右出訴の結論に達してその旨の指示を原告訴訟代理人の一人であるローランド、ゾンデルホフにしたのは前記出訴期間の最終日である昭和三七年一一月一七日のことで、この指示は国際電報によつて右代理人の事務所宛にせられたが、同日はたまたま土曜日であり、同事務所の執務時間は午後一時までであつたが、それまでに原告から何等の指示がなかつたので右代理人は特に事務所員鶴若文吉に残留待期を命じたものであり、右電報は同日電報局によつて受信せられたのであるが、事務所閉鎖後であつたため同日中に配達されず、翌々日の月曜日である一九日に漸く配達せられたものであり、右代理人としてはその即日に本訴を提起したものであつて、右は全く巳むを得ない事情によるものというべきであるというのである。

そこで考えてみるのに、本訴の出訴期間が昭和三七年一一月一七日まで延期せられていたことは、本件に関する特許庁関係記録によつて明らかであり、本訴の提起が同月一九日にせられたことは本件記録によつて明らかである。そしてまたドイツ国に住所のある原告会社から原告訴訟代理人宛本件出訴を指示した国際電報は昭和三七年一一月一七日に東京国際電報局受信所において受信せられたが、その配達のせられたのは同月一九日に至つてのことであることは、原告提出の電報用紙及び配達証明によつてこれを認めることができ、右遅配の理由も概ね原告主張のとおりであると認めてよいであろう。しかし、原告がその取消を求める審決のせられた日は同年六月二七日であり、その審決書の謄本が原告の代理人であるローランド、ゾンデルホフに送達せられた日は同年七月一八日であること原告も認め、また特許庁関係記録によつてもこれを認め得るところであつて、本訴の出訴のための期間は右送達の日から殆んど四ケ月に近い期間が存したものであり、原告会社としては右期間の満了直前の、場合によつては前記のような事態の発生する虞れのある時期まで、出訴に対する態度の決定及び代理人への指示を延すことなく、もつと早期にこれをなし得た筈であり、これをしなかつたことをもつて不可抗力によるものとは到底解し得ないところである。従つて原告主張の右事情はこれを認め得るとしても、なお右事情をもつて民事訴訟法第一五九条にいう、当事者がその責に帰すべかざる事由により不変期間を遵守すること能わざりし場合に該当するものとは、これを認め得ないところであつて、結局本訴は出訴期間を徒過した不適法な訴とするの外はなく、固よりその欠缺を補正し得べくもないものであるから、本訴は、民事訴訟法第二〇二条によりこれを却下するの外はない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!